地霊を体感する建築-福岡東峰村のシビックプライドを育む道の駅公園-/ITB12

シナリオ

地方の若者は地霊を理解しないままシビックプライドを育めずに都会へと出てしまう。福岡一高齢化している東峰村の小石原には文化や観光スポットはあるが、交通の便が悪く、まちで住民が過ごせる環境が整っていないため、シビックプライドを育めていない。住民がまちを歩きたくなるアトラクションと歩ける環境を整え、登り釜から煙が立ち上る風景を取り戻し、住民も来訪者も利用する道の駅公園をつくることでシビックプライドを育む。

小石原選定理由

東峰村唯一の小中一貫校から一番離れており、鉄道も通っていないため不便ではあるものの、車の通行量の多い通りの結節点で、窯業や英彦山の修験者が作った行者杉や行者堂、神楽の文化が残り、分庁舎のある小石原で提案する。

before plan(1/1500)シビックプライドが育めない要因:

歩ける環境が整っていない/買い物、遊ぶ等の目的を果たす場がない/まちらしさのある風景がない

小石原は地区内に子どもの遊び場や若者やお年寄りが外に出たくなるようなアトラクションがない。役場は分庁舎や診療所、道の駅を国道沿いに集めることで住民が使いやすいようにしているが、行きたいと思わせる機能や歩道が整っていないため利用されづらい。また、かつては登り釜からの煙が立ち上る風景があったが、ガスや電気釜を利用するようになったことでそれらの風景が失われている。工芸士会の事業で共同釜を利用して行くようにする計画はあるが、窯元の人々が協力的でない現状がある。

写真A

お年寄りが手押し車を押して歩けない国道沿い

写真B

生活感のにじみ出す旧道

写真C

旧道から望む英彦山

写真D

旧道から望む松尾城跡や窯元の風景、薪ストーブの煙

master plan(1/1500)まちに歩きたくなるアトラクションをつくる

既存の歩道がある部分をかつて日田街道の脇往還だった旧道を歩行者道路にして繋ぐことで、交通量の覆い国道沿いと歩車分離をして歩ける環境を整える。

旧道にはアスレチックとその地点から見える風景と関係する村の歴史や文化について知る事のできるものを点在させ、子どもの遊べて大人も運動しながら歩けるアスレチック・文化ロードとすることで小石原バス停から提案敷地までを歩きたくなる道を作る。また、民芸ブーム以前のように共同で登り釜を使うようにすることで、かつての小石原の風景を取り戻す。

提案

登り窯のように傾斜を利用して、人の密度にグラデーションをつける。

旧道沿い密度低)

住民がごろごろできたり、のんびりすごせる場

国道沿い(密度高)

来訪者や買い物をする人が集まる場


1F 道の駅

裏に駐車場を置き、国道沿いから人の利用する風景を見せる。

提案建築の駐車場:車41台/バス3台/移動図書館、移動カフェ駐車可能

(既存道の駅の駐車場:車41台/バス3台)

歩行者動線と車動線を分けて、歩いて来た人が入りやすいようにする。 


赤点線が既存の道に変わって、旧道と国道をつなぐ道になる。

2F 住民たちの居場所

英彦山や窯元の登り窯や薪ストーブの煙が立ち上る風景、松尾城跡が望め、

ねっころがったりできる芝生がある大桟橋のような空間をつくる。


2Fを通って役場や診療所、1F道の駅に行くことで、2Fに目的がなくても住民の活動が見える。

追加説明

小石原は日田街道の脇往還と小石原街道の結節点で、英彦山参りをしたり、周辺の都市へと向かう人々が宿泊する宿場があった。かつて小石原の人々は半陶半農の生業に不可欠な水や土を与えてくれる自然(山)に感謝し、神楽や祭りが行われていた。しかし、鉄道(日田彦山線)の開通や車社会の発達により宿の機能が不必要になり、修験道の峰入りの際に英彦山を始めて拝めたため重要視された土地であったことも忘れ去られようとしていたり、祭りも本来の意図が薄れて行っているため、かつての自然との関係が薄れ、地霊を感じづらくなっている。

そこで、窯元らしい登り窯の煙が立ち上るまちを見ながら歩いたり、半陶半農のまちらしく土や水、泥で遊べたり、お茶や勉強をしたり、現在住民が求めている普段の生活で自然との繋がりを感じるようにすることで、地霊を感じるようにする。

追加説明 12/30

■交通:国道沿いから離れた地区をまわる路線タクシーorバス

小石原に路線バスが通るのは国道211号沿いのみで、小石原バス停が終点である。

車を運転できない国道沿いのは路線バスを利用しやすい環境にあるが、離れて暮らす運転できない住民は路線バスを利用しづらく、タクシーを使っている。役場は助成金を出して少しでも住みやすくしようとしているが、それではまちの環境は変わらない。

国道沿いから離れた地区をまわる巡回タクシーorバスを通し、タクシー利用者が路線バスを使えるようにする。提案する道の駅や小石原バス停を住民が買い物に行く際の乗換地点にして、既存の路線バスを使って買い物に行けるようにする。

 



■地霊を感じる要素

地霊を感じた要素を五感別に色分けしてあげてみて、これらをどこで感じたかプロットしました。

国道沿いは地霊を感じる要素が少なく、旧道は地霊を感じる要素が多い。

要素を多く感じる理由

・国道沿いよりも旧道の方が標高が高いので、まちの景色を見渡しやすい

・車がほぼ通らないので、周りをみながら歩く余裕がある

→既存の歩道、小石原バス停、(提案)道の駅、役場を地霊を感じる要素の多い旧道でつなぐ。


 

■旧道をアスレチック・文化ロードにする

アスレチックをつくる理由

①車依存により、まちで過ごした思い出がつくれなくなった

地方は車社会に依存している。特に店や公共交通もあまりない中山間地域では車がないと生活できない。

車依存が引き起こしたこと

・かつて遊び場だった道が遊び場ではなくなった

・まちを歩く事がほとんどなくなった

・地元のまちで過ごした思い出がつくれなくなった

②遊び場が変化したことで、土や泥、水などで遊ぶ機会が減った

中山間地域では、かつて農業を手伝うなど生活に密接した遊びがあった。しかし、第1次産業人口が減り農作業を手伝わなくなった事で自然と触れ合う機会が減った。小石原も同様の事が言える。

公園や施設をただ作っても、生活とかけ離れているため、かつてのような中山間地域らしい遊びはできない。

参考:遊びの変容からみる中山間地域の 暮らしに関する研究(論文)

 →生活のなかで使われるようにする旧道を歩道して歩けるようにして、土や泥や水で遊べるアスレチックをつくることで中山間地域らしい遊びができる場所をつくる。

遊び場として車は通れない道にすることで、子どもやお年寄りが安心して歩ける環境をつくる。

文化を知る事ができる場を併設する理由

ハコモノの歴史資料館や文化施設でまちの歴史や文化を伝えるのでは、リアリティがなく関心が生まれない。

→歴史や文化と関係する場所や風景が実際に見れることでリアリティが生まれ関心を持てるようにする。

地域を救う事ができる理由

小石原の人々は衰退している現状を仕方ない、変える事ができないと思っている。

理由:住民が自分たちの住む土地の良さや歴史、文化をよく理解していないから。

→生活で使う道で知識を身につけられることでシビックプライドを育むことができる。



■アスレチック・文化ロードに遊具のような建築(装置)をつくり、楽しく歩ける道にする

湯布院のまちを楽しく歩けるのは、カフェ等が並んでて食べ歩きやイートインができるからだと思った。

地面に起伏をつけ丘をつくり、中にカフェ等を入れる

歴史や文化に関係する風景に意識を向ける装置



■地霊を感じる建築

駐車場を建築で隠す

国道沿いの店は駐車場があって奥に店があるため、商店街のように道から店の雰囲気が分からない。

人が居て買い物していたり、会話する声が聞こえた方がにぎわいを感じる。

駐車場を奥に配置し、建築で隠す

生活の延長線にある公園

広場や森林のなかを歩く遊歩道がある公園は生活の延長線上になく、人気もないのでなかなか使われない。

公園内に駄菓子屋や文房具屋、小さなレストランなどのショップや多目的ホールを入れ、公園以外の機能も持たせることで、普段から使われる公園をつくる。

まちの風景を遮らない建築

既存の道の駅は、裏の旧道からの英彦山や松尾城、窯元の風景を遮っている。

→まちの風景を遮らない、旧道と繋がりのある建築をつくる

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コメント: 1
  • #1

    admin (土曜日, 27 12月 2014 09:51)

    *修士設計だから、ただ設計しただけではなく、他の地域でも応用出来るように説明。
    *地霊を感じる要素をどう選び、どう繋げ、地域を救っていくのか?
    *論理的かつ視覚的に表現する。

    *まちを歩きたくなる環境を整えるのはどうすれば良いか?
    *登り釜から煙が立ち上る風景を取り戻すにはどうすれば良いか?
    *道の駅公園ができればなぜシビックプライドが育まれるのか?現状と何が違うのか?
    *旧道を歩行者道路にして繋ぐだけで歩くようになるだろうか?
    *アスレチック・文化ロードにするにはどどうすれば良いか?
    *共同で登り釜を使うように出来るだろうか?どうやって?

    *公共交通を考えるように伝えたはずだが、丸無視。