街路線分長による都市の奥深さの記述/SIK6

■街路線分長による都市の奥深さの記述

Notation of the urban depth using street segment length

 

1.研究の背景と目的

1-1.都市のキャラクター

 都市を曖昧に認識していながらも、何かに魅力を感じてる。その都市の印象を決定する要因の一つに街路空間体験があり、分かりやすさや見えやすさがその指標となっているが、これらを計る明確な尺度は存在しない(図1)

 

1-2.都市の奥深さと街路空間

 都市の印象は周辺との関係性によって成立する場所の性格や空間の奥行き感が、目に見える景観や空間の利用と調和して生まれている。街路空間はこの部分的に在るものを連続的に、重ねて繋ぎ合わせていく役割を担っている。都市の印象に濃淡が生まれるには、街路空間体験がどのように在るかが関係するのではないだろうか(図2)

 渋谷の街路形態を線分化してみると、一本の街路線分長さは短いが、複数の街路が接続して、街路体験のに振れ幅を与えていている。ここで、銀座の一街路と接続している街路線分数や長さを比較すると、街路空間面積、線分数はあまり変わらないが、街路線分長の和に明確な差がある。神楽坂では、街路空間面積は低いが、街路線分長の和は最長値となり、一街路に接続する街路線分長が都市の奥深さを計る上で重要な指標になると考えられる(図3)

 

1-3.目的

 本研究は、一街路空間に接続する街路線分長に着目し、その関係を明らかにすることで、街路体験の奥深さをビジュアルに記述することを目的とするものである。

 

2.研究の位置づけ

2-1.既往研究

 街路空間に着目した研究には、生態幾何学的分析を行った研究、アンケートなどによって定性的に分析した研究、都市解析やSpace Syntaxなどの定量的な研究、空間構成とイメージ構成を同時に扱った研究*)が挙げられる。街路の定量的な記述を行っている研究として、街路形態の分岐点を抽出し、分岐点と複雑さとの関係を述べているもの*)や、歩行可能領域を都市のあそびとして抽出したもの*)、隙間長さを抽出し、都市の頑強さと都市の隙間の関係を用いて都市デザイン手法へ展開したもの*)がある(図4)

また、Space Syntax理論を用いて解析を行った研究は、対象が広範囲で行われているか、狭い範囲で行われているため、個々の地域イメージが見いだしにくく、その解析結果はグラフなどの表現が多く、実際の街路空間の体験をイメージさせることが困難である。 

 本研究は、街路空間の都市解析または都市数理計画に属する研究として位置づけられるが、都市の複雑さを解明するのではなく、街路空間体験をビジュアルな記述を目的としている点で、既往の研究と異なる。

 

2-2.都市の外部空間と街路空間の長さの比較

 異なる特徴をもつ都市の外部空間に着目し、街区より外側の街路空間と街路長さの和を比較対象として抽出する(図5)。都市ごと外部空間、街路空間、街路長さの和の全てで違いがみられるため、街路空間の長さには都市の印象と密接な関係があると考えられる。

 

3.接続する街路線分長の測定

3-1.都市の街路図の作成

 街路の中心線に沿って直線でトレースし、街路線分*)のそれぞれに、番号と長さの情報を書き加えていったものを都市の「街路図*)」と定義する(図6)

 

3-2.測定方法の検討

 街路線分同士の長さの関係を比較するため、基準点を変えた三つの方法を予備実験として検討した。街路、街区を基準面としたもの、交差点を基準点としたもの、各基準面・点に接続する一街路線分長の和を測定する(図7)

 

3-3-1.一街路に接続する街路線分長による測定

 一街路の選定をどのように行うか、見通すことのできない屈折した街路線分はどのように扱うか、重複して数えてしまった場合の数値の扱いなどの問題が挙げられる。

 

3-3-2.一街区に接続する街路線分長による測定

 都市において街区をどのように割るのか、割り方によって測定が行えない箇所が出てきてしまう。だが、表現の方法では、面的に捉えることで、総体の記述できる可能性があると考える。

 

3-3-3.交差点に接続する街路線分長による測定 

 街路交差点(Street Junction以下SJ)に接続する街路線分長さの和をどのように扱うか、これも重複して数えてしまった場合の数値の扱いなどの問題が挙げられる。SJに対して重み付けをしていくことが出来そうだが、街路体験の総体を記述できるかはわからない(図8)

 

4.まとめ

 都市の奥深さを生み出している要因は何か、街路空間の構成要素から絞っていき、接続してくる街路空間の在り方であると考えた。一街路に接続する街路線分長の和、一街区に接続街路線分長の和、SJからみた街路線分長の和、この街路線分長が都市の奥深さの表記に適している可能性がある。これらの測定を踏まえ、都市の奥深さとは何か、別視点からも分析し検討する必要があると考える(図9)

5.今後の展望

 本研究では、都市の奥深さの記述方法の検討を試みたが、街路空間体験の総体の記述に至っていない。今後は記述方法の検討を行って行くと共に、本記述の有意性の検証を行う。また、街路体験の奥深さをビジュアルに表現するのに最適な記述方法を検討していく(図10)

 

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コメント: 2
  • #1

    admin (水曜日, 26 10月 2011 01:56)

    1-1.都市のキャラクター
    *これは不要ではないか?
    1-2.都市の奥深さと街路空間
    *図2も3も分かりにくい。特に3は文章と合っているのか?
    1-3.目的
    *一街路空間??書き直し。
    *都市の奥深さ(複雑さ)について興味を持ち、それを街路線分の長さを用いて示す論文。
    *町田は、それを街路分岐点数やその重み付けで示そうとした。今回は街路線分数と長さで示すのか?
    2-1.既往研究
    *Space Syntax理論以降はコピーなので、書き直し。町田との差異を示せ。
    2-2.都市の外部空間と街路空間の長さの比較
    *日本語がよくわからない。街区より外側の街路空間??街路長さ??街路空間の長さ??
    3-1.都市の街路図の作成
    *これは却下。街路図の定義でもなんでもない。
    3-2.測定方法の検討
    *図7がよく分からない。SJに接する線分を数えて総和をとるのでは?(町田のに似る)

    前半のストーリーを詰めて書き直し、後半は各々のデータとその分析を載せ、今後の展望へつなげる。3-3-3のような書き方は良くない。別視点からも分析し検討するではなく、具体的なビジョンを書く。4と5はまとめて良い。

  • #2

    admin (水曜日, 26 10月 2011 11:46)

    町田論文の変形だとすると・・・

    街路線分による都市の奥深さの記述
    Notation of the urban depth using street segment

    街路線分による街路空間の複雑さの記述
    Notation of the street space complexity using street segment