街路線分長さによる街路空間体験の奥深さの記述/SIK

街路線分長さによる街路空間体験の奥深さの記述

 

1.研究の背景と目的

1-1.都市のキャラクター

 都市を曖昧に認識していながらも、何かに魅力を感じてる。その都市の印象を決定する要因の一つに街路空間体験があり、分かりやすさや見えやすさがその指標となっているが、これらを計る明確な尺度は存在しない(図1)

1-2.都市の奥深さと街路空間

 都市体験は建築内部以外のほとんどが街路空間で行われ、周辺との関係性によって成立する場所の性格や空間の奥行き感が、目に見える景観や空間の利用と調和して都市の印象は生まれている。つまり、部分的であるものを連続的に捉えることで、都市の印象は奥深いものになり、都市の印象と街路空間体験は密接な関係があると言える(図2)

 ここで、街路形態を線分化し、渋谷と銀座において街路を比較すると明確な差が生じている。渋谷は、屈折が多く一線分は短いが、別街路が複数接続している。一方、銀座は、一線分が長いため、変化に乏しい街路景観となっている。街路に接続している街路線分の数や長さは、街路空間体験の奥深さをもたらしている要因と考えることができる。接続する街路の長さが街路空間体験の奥深さを計る上で重要ではないかと考えられる(図3)

1-3.目的

本研究は、街路空間に接続する街路空間の長さに着目し、その密度分布を示すことで、街路空間体験の奥深さをビジュアルに記述することを目的とするものである。

 

2.研究の位置づけ

2-1.既往研究

 都市構造の記述を行っている研究として、町田*)は街路形態の分岐点に着目し複雑さの記述を行っており、分岐点での角度に重み付けをしたものである。都市デザイン手法として、井村*)は、都市の隙間が都市の印象を生み出すものであると位置づけ、都市に変化を生み続けられる頑強さを持たせていく手法である。圓道寺*)は都市の残余空間から歩行可能領域を導き、都市のあそびを考察している。稲坂*)はGISを用いて因子分析を行い、地域イメージを可視化を試みている(図4)。またspace syntax理論を用いて解析を行った研究は、対象が広範囲で行われているか、狭い範囲で行われているため、個々の地域イメージが見いだしにくく、その解析結果はグラフなどの表現が多く、実際の都市空間、街路空間の体験をイメージさせることが困難である。本研究は、街路形態の都市解析または都市数理計画に属する研究として位置づけられるが、都市の複雑さを解明するのではなく、街路空間体験の奥深さを感覚的に捉えさせるためのビジュアルな記述を目的としている点で、既往の研究と異なる。

2-2.都市の外部空間と街路空間の長さの比較

 都市の発展経緯が異なる都市の外部空間に着目し、街区より外側を街路空間とし、比較対象を抽出する(図5)。神楽坂など私道の多い都市は、外部空間に対して、街路空間の割合が少ない。渋谷、銀座は構成の仕方は異なるが、街路空間の面積は似た数値となっている。

 

3.接続する街路線分長さの測定

3-1.都市の街路図の作成

 街路の中心線に沿って直線でトレースし、街路線分*)のそれぞれに、番号と長さの情報を書き加えていったものを都市の「街路図*)」と定義する(図6)

3-2.測定方法の検討

 街路線分同士の長さの関係を比較するため、基準点を変えた三つの方法予備実験として検討した。街路、街区を基準面としもの、交差点を基準点としたものの各街路線分の長さを測定する(図7)

3-3-1.一街路に接続する街路線分長さによる測定

 一街路の選定をどのように行うか、見通すことのできない屈折した街路線分はどのように扱うか、重ねて数えてしまった場合どうするかなどの問題があげられる。だが、街路空間体験をより身近に示すことが出来ると考えられる。

3-3-2.一街区に接続する街路線分長さによる測定

 都市において街区をどのように割るのか、割り方によって測定が行えない箇所が出てきてしまう。だが、表現の方法では、総体の記述できる可能性があると考える。

3-3-3.交差点に接続する街路線分長さによる測定 

 交差点(SJ)に接続する街路線分長さの和でSJに対して重み付けをしていくことが出来そうだが、街路空間体験の総体を記述できるかはわからない。

4.まとめ

 街路空間体験の奥深さを生み出しているのは何か、街路空間の構成要素から絞っていき、接続してくる空間の在り方であると考えた。一街路に接続する街路線分長さの和、一街区に接続街路線分長さの和、SJからみた街路線分長さの和、三つの測定方法から奥深さの要因であるとした。これらの測定を踏まえ、街路空間体験の奥深さのとは何か、別の視点から分析し検討する必要があると考える。

5.今後の展望

 本研究では、これまでに二都市を比較することで、街路空間体験の記述方法の検討を試みたが、街路空間体験の総体の記述に至っていない。今後は記述方法の検討を行って行くと共に、特性の異なる都市を複数選定し、本記述の有意性の検証を行う。また、街路空間体験の奥深さをビジュアルに表現するのに最適な記述方法を検討していく。

 

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コメント: 3
  • #1

    admin (月曜日, 24 10月 2011 22:41)

    梗概はなぜないのか?図なしではよく分からない。

    >街路線分長さによる街路空間体験の奥深さの記述/SIK
    *街路線分長(さ)による街路体験の奥深さの記述

    1-2.都市の奥深さと街路空間
    *「建築内部以外のほとんどが街路空間で行われ」不要。
    *「都市の印象は奥深いもの」とはどういう意味か。では浅いものは?
    *なぜ「街路に接続している街路線分の数や長さは、街路空間体験の奥深さをもたらしている要因」だと考えられるのか?
    *話が冗長である。ダブりを減らし、内容を増やす。

    1-3.目的
    *「街路空間に接続する街路空間の長さ」??伝わりにくいのでは?
    *密度分布を示すのか?

    2-1.既往研究
    *日本語になっていない。類似研究としてどんなものとどんなものがあり、それらとどこが違っているのかを明確に示す。

    3.接続する街路線分長さの測定
    *図版がないので分からない。
    *中間発表なので、急にまとめる必要はない。街路線分長が都市の奥深さの表記に有効であるかもしれないことを示せれば良い。

  • #2

    sik (火曜日, 25 10月 2011 01:20)

    すみません。
    遅くなりましたが、梗概いれました。
    修正します。

  • #3

    admin (火曜日, 25 10月 2011 17:14)

    タイトルを考え直したい
    *街路線分長(さ)による街路体験の奥深さの記述←かぶっている
    *街路線分長(さ)による都市の奥深さの記述
    *Notation of the urban (street) depth using street segment length

    似たような論文に下記がある。
    712 街路景観における奥行きに関する考察(都市計画)